Illustratorの作業を自動化したいと思っても、スクリプトを自分で作るべきか、生成AIに頼むべきか迷いませんか。
自作ならコードの仕組みを理解しやすい一方、完成までには知識と時間が必要です。生成AIなら早く形にできますが、出力されたコードをそのまま仕事で使えるとは限りません。
私は、文字削除スクリプトを自作した後、そのコードを生成AIへ渡して改良しました。
この記事では、その経験をもとに、自作と生成AIの違いを難易度、速さ、安全性、修正のしやすさから比較します。初めてIllustratorスクリプトを作る方が、自分に合う方法を選ぶための参考にしてください。
ーProfileー
Illustrator歴20年のDTP・グラフィックデザイナー。
制作現場で感じた手間を減らすため、Illustratorスクリプトを自作し、実際の作業で検証しています。
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結論:初心者は生成AIを入口にする

初めてIllustratorスクリプトを作るなら、生成AIを入口にすると始めやすくなります。
コードを一から書けなくても、実現したい作業を文章で伝えれば、スクリプトの土台を作ってもらえるからです。分からない部分の説明や、エラーが出たときの修正案も相談できます。
ただし、生成AIへすべて任せるのはおすすめしません。
生成AIは、曖昧な指示をもとに、こちらが想定していない条件を補うことがあります。エラーが出ずに動いても、正しい処理が行われているとは限りません。
そのため、人と生成AIの役割を次のように分けます。
| 自分で決めること | 生成AIに頼めること |
|---|---|
| 何を自動化するか | コードの土台を作る |
| どのデータを処理するか | 機能の追加案を出す |
| 元ファイルをどう扱うか | エラーの修正案を出す |
| どの状態を完成とするか | コードの内容を説明する |
| どの条件でテストするか | テスト項目の候補を出す |
つまり、生成AIにコード作成を手伝ってもらい、目的・仕様・テストは自分で管理する方法です。
人が設計・検証・最終判断を担当し、生成AIを初稿や改善の補助に使うハイブリッド方式なら、速さと安全性のバランスを取りやすくなります。
自作から生成AIでの改良までを比較

今回比較するのは、指定した文字を複数のIllustratorファイルから削除するスクリプトです。
最初に自分で基本版を作り、そのコードを生成AIへ渡して、機能と安全性を追加しました。
生成AIにゼロから完成品を作ってもらった事例ではありません。自作と生成AIを組み合わせた過程として紹介します。
自作版は約5日で作成
自作当時は、JavaScriptの変数、定数、関数、条件分岐、繰り返し処理など、基本的な仕組みは理解していました。
ただし、Illustratorスクリプトを何も見ずに書けるレベルではありません。参考書でIllustrator固有の処理を調べながら、普段のデザイン業務の合間に少しずつ作成しました。
完成までにかかった期間は、おおよそ5日です。
自作版には、次の機能を実装しました。
- 削除する文字を入力する
- 処理するフォルダを選択する
- フォルダ内のAIファイルを順番に開く
- 指定文字と空のテキストフレームを削除する
- 処理後のファイルを別名で保存する
コードは、ファイルを開き、文字を削除し、保存する順番を上から追いやすい構成です。自分で調べながら書いたため、どこで何を処理しているか把握しやすい点がメリットでした。
一方、実際に使うと、最初には想定していなかった条件も見えてきました。
たとえば、同名ファイルがある場合の処理、連結テキスト、非表示オブジェクト、複数文字の指定などです。
自作では処理を理解しながら進められますが、必要な条件へ気づき、コードへ反映するための知識と時間が必要でした。
自分でコードを書く方法を選びたい方は、Illustratorスクリプトを自作する手順で、準備からコードの保存・実行まで確認できます。
生成AIで約2時間半かけて改良
自作版が完成した後、そのコードを生成AIへ渡して改良しました。
元コードがあるため、「この機能は残す」「この部分を変更する」と具体的に伝えられます。現在の処理内容を最初から文章で説明する手間も減らせました。
改良作業は、確認できる範囲で約2時間半です。少なくとも7回ほど要望や問題点を伝えながら修正しています。
主な修正内容は次のとおりです。
- 「確認のみ」を「事前確認」へ変更する
- 事前確認をチェックボックスからボタンへ変更する
- ボタンの順番とヘルプの配置を見直す
- 不要な説明やバージョン表記を整理する
- 複数の文字を一度に削除できるようにする
一度の指示で完成したわけではありません。
画面を確認して使いにくい部分を伝え、修正版をIllustratorで試す作業を繰り返しました。
生成AI版で変わったこと
最終的な生成AI版には、文字削除だけでなく、実務で使うための機能が加わっています。
| 項目 | 自作版 | 生成AIで改良した版 |
|---|---|---|
| 削除文字 | 1種類 | 複数行で指定 |
| 実行前の確認 | なし | 一致件数を事前確認 |
| 元ファイル | 開いて別名保存 | 複製したファイルを処理 |
| 同名ファイル | 上書きの可能性あり | 連番を付けて保存 |
| テキスト処理 | フレーム単位 | Story単位で重複を防止 |
| 非表示・ロック | 一部対応 | 一時解除して状態を復元 |
| エラー確認 | 画面上のエラー | 結果表示とログ保存 |
| 操作説明 | なし | ヘルプ画面を用意 |
生成AI版は、安全性と操作性が高まりました。一方で、ファイル複製、表示状態の復元、文字位置の処理、ログ保存などが加わり、コード全体は長くなっています。
生成AIは、機能追加を速める点では役立ちました。しかし、追加する機能や画面の使いやすさを判断し、完成と決めたのは人間です。
自作と生成AIを7項目で比較

自作と生成AIには、それぞれ得意な部分があります。
今回の事例だけを見て、「5日と2時間半だから生成AIの方が速い」とは判断できません。
自作版はゼロから基本機能を作り、生成AI版は完成したコードを土台に改良しています。作業条件が異なるためです。
初心者が作成方法を選ぶときは、次の7項目で考えると判断しやすくなります。
| 比較項目 | 自作 | 生成AIを活用 |
|---|---|---|
| 始めやすさ | 基礎学習が必要 | 文章で依頼できる |
| 初稿の速さ | 調査に時間がかかる | 短時間で作りやすい |
| 完成までの時間 | 知識と経験に左右される | 仕様と修正回数に左右される |
| コードの理解 | 処理を把握しやすい | 長くなると追いにくい |
| 機能追加 | 調査と実装が必要 | 要望を伝えて追加しやすい |
| 安全性 | 作成者の知識次第 | 指示とテスト次第 |
| 修正・保守 | 自分で書いた部分は追いやすい | 仕様と変更履歴が必要 |
生成AIは始めやすいが判断は必要
自作する場合は、JavaScriptの基礎に加え、Illustratorのドキュメント、レイヤー、テキストなどをコードから操作する方法も調べる必要があります。
生成AIなら、コードを一から書けなくても始められます。
ただし、生成AIを使えば知識が一切不要になるわけではありません。
何を処理するか、元ファイルを残すか、どの結果を完成とするかは、自分で判断する必要があります。
自作ではコードを書く知識、生成AIでは目的や条件を整理する力が特に求められます。
初稿の速さと完成までの速さは違う
最初のコードを作る速さでは、生成AIが有利です。
一方、コードを受け取った後には、実行、結果確認、機能追加、再テストが必要です。
生成AIが作った初稿に不足が多ければ、修正のやり取りが長くなる場合もあります。
そのため、「コードが出るまでの速さ」と「実務で使える状態になるまでの速さ」は、分けて考える必要があります。
自作は理解しやすく生成AIは拡張しやすい
自作の強みは、調べながら書いた処理の意図を把握しやすいことです。
後から機能を変更するときも、修正する場所の見当を付けやすくなります。ただし、知らない処理を追加するには、新たな調査が必要です。
生成AIは、文章で要望を伝えて機能を追加できます。
一方、修正を繰り返すほど、自分が理解していない関数や条件分岐も増えていきます。
生成AIを使う場合は、一度に多くの機能を追加せず、一つずつ動作を確認した方が管理しやすくなります。
安全性は作成方法だけでは決まらない
自作だから安全、生成AIだから危険とは限りません。
安全性を左右するのは、元ファイルの扱い、上書き条件、エラー時の動作などを、どこまで仕様に含めたかです。
生成AIへ「安全にしてください」と伝えるだけでは、仕事で必要な条件がすべて入るとは限りません。
また、後から修正する場合は、作成時の目的や変更内容を記録しておく必要があります。
完成したコードだけでなく、次の情報も残しておくと管理しやすくなります。
- スクリプトの目的
- 処理対象と対象外
- 対応するIllustratorとOS
- テストした内容
- バージョンごとの変更点
自作・生成AI・ハイブリッドが向いている人

どの方法が合うかは、プログラミング経験だけでは決まりません。
作成に使える時間、コードをどこまで理解したいか、完成後も自分で修正したいかで判断します。
| 重視すること | 向いている方法 |
|---|---|
| コードの仕組みを基礎から理解したい | 自作 |
| プログラミングの知識も身につけたい | 自作 |
| まず小さな自動化を試したい | 生成AI |
| コードを一から書く負担を減らしたい | 生成AI |
| 速さと安全性の両方を重視したい | ハイブリッド |
| 生成AIを使いながら内容も理解したい | ハイブリッド |
自作が向いている人
自作は、調べることや試行錯誤を学習の一部として楽しめる人に向いています。
完成までには時間がかかりやすいものの、処理の仕組みを理解しやすく、後から自分で修正できる力も身につきます。
生成AIが向いている人
生成AIは、コードを一から書くことに抵抗があり、まず動くものを作ってみたい人に向いています。
ただし、テスト用データを用意し、結果を一つずつ確認できることが前提です。
初心者にはハイブリッド方式が現実的
今回の想定読者には、自分で目的を決め、生成AIにコード作成を補助してもらう方法が適しています。
すべて自作するより始めやすく、生成AIへ丸投げするよりも、意図しない処理を防ぎやすいからです。
最初は、結果を画面上で確認できる小さな処理から始めます。
たとえば、選択中のオブジェクト数を表示する、レイヤー名を一覧にする、テスト用の文字を置換するといった処理です。
小さなスクリプトでも、目的を決め、コードを作り、Illustratorで試す流れを経験できます。
ハイブリッド方式で安全に進める

生成AIを活用するときは、次の5段階で進めると、確認漏れを減らしやすくなります。
1.自動化する目的を決める
最初に、「何を入力し、どのような結果になればよいか」を日本語で整理します。
たとえば「文字を削除する」だけでは、対象ファイル、非表示テキスト、保存方法などが決まりません。
最初から完璧な仕様書を作る必要はありませんが、最低限の入力と出力は決めておきます。
2.中心機能から作る
最初から多機能なスクリプトを依頼すると、コードが長くなり、不具合の原因も見つけにくくなります。
文字削除なら、まず一つの文書内で文字を削除する処理を作ります。
動作を確認した後で、フォルダ処理、別名保存、上書き防止などを追加します。
生成AIへ伝える内容や、コードを段階的に修正する流れは、生成AIでIllustratorスクリプトを作る方法で詳しく解説しています。
3.コピーしたデータでテストする
生成されたコードを、仕事で使っている元ファイルへすぐ実行しないようにします。
最低限、次の条件を試します。
- 対象があるデータ
- 対象がないデータ
- ロックや非表示を含むデータ
- 同名の出力ファイルがある状態
- 一部だけ処理できないデータ
エラーが出なくても、元ファイル、書式、レイヤー状態などが変わっていないか確認します。
コードが動かない、途中でエラーが出る、想定した結果にならない場合は、Illustratorスクリプトが動かない原因と確認手順を参照してください。
4.機密情報を取り除く
業務で使っているコードやエラーログには、顧客名、案件名、ファイルパスなどが含まれる場合があります。
生成AIへ相談するときは、固有名詞を仮の名前へ置き換え、問題を再現できる最小限のコードだけを渡します。
使用するサービスの設定や、会社の生成AI利用ルールも確認してください。
5.仕様と変更履歴を残す
生成AIとのやり取りが増えると、機能を追加した理由が分かりにくくなります。
スクリプトの目的、対応環境、テスト内容、変更点を記録しておくと、後から修正しやすくなります。
生成AIへ再び相談するときも、残す機能と変更する部分を伝えやすくなります。
まとめ:目的に合う作り方を選ぶ

Illustratorスクリプトを作る方法は、一つではありません。
コードの仕組みを学び、自分で修正できるようになりたい人には自作が向いています。
まず小さな自動化を試し、コードを書く負担を減らしたい人には生成AIが役立ちます。
初めて作る人が速さと安全性の両方を重視するなら、生成AIにコード作成を補助してもらい、目的・仕様・テスト・完成判断は自分で管理する方法が現実的です。
自作と生成AIのどちらか一方に決める必要はありません。自分が理解したい範囲や、処理による影響の大きさに合わせて、任せる範囲を調整してください。


















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