Illustratorで同じ操作を何度もくり返していると、「この作業を自動化できないだろうか」と感じることがあります。
Illustratorスクリプトは、JavaScript(AdobeのExtendScript環境)を使って自分で作成できます。
ただし、最初から長く複雑なコードを書く必要はありません。
この記事では、初心者でも試しやすい短いサンプルコードを使い、次の4手順を解説します。
- 自動化したい作業を整理する
- 開発環境とJavaScriptの基礎を準備する
- サンプルコードを使って自作する
- JSX形式で保存して実行・テストする
今回は、選択中のオブジェクト数を表示するスクリプトを作ります。
まずは小さなコードを動かし、少しずつ変更しながら仕組みを理解していきましょう。
自作と生成AIのどちらから始めるか迷っている方へ
Illustratorスクリプトには、自分でコードを書く方法と、生成AIを活用する方法があります。
この記事では、自分でコードを書く方法を解説します。どちらが自分に合っているか迷っている方は、比較記事を先に確認してください。
[Illustratorスクリプトの自作と生成AIを比較した記事]
ーProfileー
Illustrator歴20年のDTP・グラフィックデザイナー。
制作現場で感じた手間を減らすため、Illustratorスクリプトを自作し、実際の作業で検証しています。
関連記事:無料で使えるIllustratorスクリプト一覧
手順1|自動化したいIllustrator作業を整理する

Illustratorスクリプトを作る前に、まずは自動化したい作業を一つに絞ります。
最初から複数の機能を入れようとすると、コードが長くなります。問題が起きた場所も分かりにくくなります。
初心者のうちは、普段の仕事で何度もくり返している小さな操作から始めましょう。
小さなくり返し作業から選ぶ
Illustratorの作業を振り返り、次のような手間がないか探してみてください。
- 選択しているオブジェクトの数を確認する
- レイヤー名を変更する
- 選択したテキストを書き換える
- オブジェクトを決まった位置へ移動する
- 同じ設定でファイルを書き出す
自分で手順を説明できる作業は、スクリプトの題材にしやすい傾向があります。
一方で、「レイアウトをいい感じに整える」のように、判断基準が曖昧な作業は最初の自作には向いていません。
まずは、処理する対象と実行後の結果が明確な作業を選びましょう。
この記事では、練習用として「選択中のオブジェクト数を画面に表示する」という処理を作成します。
処理手順を日本語で書き出す
自動化する作業が決まったら、Illustrator上で行う処理を日本語で書き出します。
今回作成するスクリプトの流れは、次のとおりです。
- Illustratorファイルが開かれているか確認する
- 選択中のオブジェクトを取得する
- 選択されている数を調べる
- 取得した数を画面に表示する
この段階では、プログラムの命令や専門用語を使う必要はありません。
普段の作業を、別の人に説明するように整理します。
たとえば「選択したものを処理する」だけでは、何をどのように処理するのか分かりません。
次のように、対象と結果を具体的にします。
選択中のオブジェクトを取得し、その個数をメッセージとして表示する。
処理内容を日本語で整理しておくと、必要な命令を探しやすくなります。
想定どおりに動かなかった場合も、どの処理に問題があるのか確認しやすくなります。
手順2|開発環境とJavaScriptの基礎を準備する

自動化したい作業を整理したら、スクリプトを書くための環境を準備します。
特別な開発ソフトをそろえる必要はありません。
基本的には、次の3つがあれば始められます。
- Illustrator
- テキストエディタ
- テスト用のIllustratorファイル
Illustratorとテスト用ファイルを用意する
最初のテストには、仕事で使用している本番データを使わないでください。
スクリプトの内容によっては、オブジェクトの位置や文字、レイヤー構成などが変更される可能性があります。
次のいずれかを用意しましょう。
- 新しく作成したIllustratorファイル
- 本番データを複製したファイル
- 変更されても問題がない練習用データ
今回作成するスクリプトは、選択数を表示するだけです。
ただし、今後コードを変更することを考え、最初からコピーしたデータで試す習慣をつけておくと安心です。
テキストエディタを用意する
スクリプトのコードは、テキストエディタを使って入力します。
メモ帳などでも作成できますが、Visual Studio Code(VS Code)が便利です。
VS Codeでは、コードの色分けや、かっこの対応を確認できます。入力ミスにも気づきやすくなります。
VS Codeのインストールや初期設定は、次の記事で解説しています。
Illustratorスクリプト作成に使うVS Codeの設定方法
JavaScript・ExtendScript・JSXの関係を知る
この記事では、IllustratorスクリプトをJavaScriptで作成します。
Illustratorでは、Adobeアプリを操作するためのJavaScript環境として、ExtendScriptが使われてきました。
この記事では初心者にも分かりやすいように、基本的に「JavaScript」と表記します。
それぞれの関係は、次のとおりです。
- JavaScript:コードを書くために使う言語
- ExtendScript:Adobeアプリを操作するためのJavaScript環境
- JSX:作成したコードを保存するときに使う拡張子
Webサイトで使うJavaScriptと基本的な書き方は似ています。
ただし、Illustratorスクリプトでは、ファイルやレイヤー、オブジェクトなどを操作するための固有の命令を使います。
最初に必要なJavaScriptの基礎
今回のサンプルでは、主に次の2つを使います。
- 変数:取得した情報や数値を一時的に保存する
- 条件分岐:条件に応じて処理を分ける
最初からJavaScriptの文法をすべて覚える必要はありません。
まずはサンプルを動かしながら、「この行は何をしているのか」を確認していきましょう。
くり返しや関数などの文法は、必要になった段階で学べば問題ありません。
詳しい基本文法は、次の記事で解説しています。
Illustratorスクリプトで使うJavaScriptの基本文法
手順3|サンプルコードを使ってスクリプトを自作する

準備ができたら、実際にJavaScriptのコードを書いてみましょう。
今回は、Illustratorで選択しているオブジェクトの数を取得し、メッセージとして表示します。
最初からコードをすべて理解する必要はありません。
まずはサンプルをそのまま動かし、結果を確認することが大切です。
選択中のオブジェクト数を表示する
VS Codeなどのテキストエディタを開き、次のコードを入力してください。
var selectedObjects = app.activeDocument.selection;
alert("選択中のオブジェクト数:" + selectedObjects.length);
最初のテストでは、Illustratorファイルを開き、オブジェクトを1個以上選択した状態で実行します。
3個のオブジェクトを選択している場合は、次のように表示されます。
選択中のオブジェクト数:3
この短いサンプルは、ファイルが開かれ、オブジェクトが選択されていることを前提にしています。
ファイルや選択状態を確認する処理は、このあと追加します。
コードの意味を一行ずつ確認する
1行目では、Illustratorで選択しているオブジェクトを取得しています。
var selectedObjects = app.activeDocument.selection;
それぞれの意味は、次のとおりです。
- `var`:変数を作る
- `selectedObjects`:取得した情報を保存する変数名
- `app`:起動しているIllustratorを示す
- `activeDocument`:現在操作しているファイルを示す
- `selection`:選択中のオブジェクトを取得する
2行目では、選択数をメッセージとして表示しています。
alert("選択中のオブジェクト数:" + selectedObjects.length);
alert()は、画面にメッセージを表示する命令です。
selectedObjects.lengthでは、取得したオブジェクトの数を調べています。
この2行で、次の処理を行っています。
選択中のオブジェクトを取得し、その個数を画面に表示する。
手順1で日本語にした処理が、JavaScriptのコードに置き換わった形です。
サンプルコードを1か所変更する
サンプルが動いたら、コードの一部を変更してみましょう。
最初は、表示する文章を変えるのがおすすめです。
var selectedObjects = app.activeDocument.selection;
alert(selectedObjects.length + "個のオブジェクトを選択しています。");
3個選択している場合は、次のように表示されます。
3個のオブジェクトを選択しています。
変更したのは、alert()の中だけです。
一度に変更する場所を1か所に絞ると、どの変更が実行結果に影響したのか確認しやすくなります。
動かなくなった場合も、直前の変更を戻せば原因を探しやすくなります。
ファイルと選択状態を確認する
最初のサンプルに、ファイルと選択状態を確認する処理を追加します。
if (app.documents.length === 0) {
alert("Illustratorファイルを開いてください。");
} else {
var selectedObjects = app.activeDocument.selection;
var selectedCount = 0;
if (selectedObjects !== null) {
selectedCount = selectedObjects.length;
}
alert("選択中のオブジェクト数:" + selectedCount);
}
最初の条件では、Illustratorファイルが開かれているか確認しています。
if (app.documents.length === 0)
開いているファイルが0の場合は、次のメッセージを表示します。
Illustratorファイルを開いてください。
ファイルが開かれている場合は、選択中のオブジェクトを取得します。
var selectedObjects = app.activeDocument.selection;
次に、選択数を保存する変数を用意します。
var selectedCount = 0;
オブジェクトが選択されている場合だけ、実際の選択数を保存します。
if (selectedObjects !== null) {
selectedCount = selectedObjects.length;
}
このコードでは、次のように処理が分かれます。
- ファイルが開かれていない:案内を表示する
- オブジェクトが選択されている:選択数を表示する
- 何も選択されていない:0と表示する
まずは短いコードを動かし、確認処理をあとから追加する流れがおすすめです。
一度に完成させず、少しずつ機能を増やしましょう。
手順4|JSX形式で保存して実行・テストする

サンプルコードを書いたら、Illustratorで実行できるように保存します。
コードが正しくても、拡張子や保存方法が間違っていると実行できません。
ファイルを.jsx形式で保存する
VS Codeで「名前を付けて保存」を選択します。
今回は、次のファイル名で保存します。
count_selected_objects.jsx
ファイル名の末尾にある.jsxが拡張子です。
保存時は、次の点を確認してください。
- ファイル名の末尾が`.jsx`になっている
- `.jsx.txt`になっていない
- 保存場所を把握している
- コードの変更後に上書き保存している
Windowsでは、拡張子が非表示になっている場合があります。
エクスプローラーの表示設定で「ファイル名拡張子」を表示し、末尾が.jsxになっているか確認してください。
Illustratorからスクリプトを実行する
テスト用のIllustratorファイルを開き、オブジェクトをいくつか作成します。
数を確認したいオブジェクトを選択したら、Illustratorのメニューから次の順番で進みます。
ファイル
→ スクリプト
→ その他のスクリプト

ファイル選択画面が表示されたら、保存したcount_selected_objects.jsxを選択します。
スクリプトが正しく実行されると、選択中のオブジェクト数が表示されます。

実際に選択した数と、表示された数が一致しているか確認してください。
条件を変えてテストする
完成版のサンプルは、次の条件でテストします。
- オブジェクトを1個選択する
- 複数のオブジェクトを選択する
- 何も選択しない
- Illustratorファイルを閉じる
想定したメッセージが表示されるか、条件を変えながら確認しましょう。
移動や削除などの機能を追加した場合は、必ずコピーしたデータを使ってください。
動かない場合に確認する項目
スクリプトが動かない場合は、コードを書き直す前に次の点を確認します。
- ファイル名の末尾が`.jsx`になっているか
- Illustratorファイルを開いているか
- 必要なオブジェクトを選択しているか
- コードの変更後に上書き保存したか
上記を確認しても実行できない場合は、エラー内容やIllustratorの状態を調べます。
症状別の対処方法は、次の記事で解説しています。
自作を続けるためのサンプルと学習方法

最初のスクリプトを動かせたら、自分の仕事に近いサンプルを試してみましょう。
いきなり複数の機能を組み合わせるのではなく、1つの処理だけを行う短いコードから始めます。
レイヤー・テキスト・図形のサンプルを試す
Illustratorでは、次のような処理を練習できます。
- レイヤーを取得する
- レイヤー名を変更する
- 選択中のテキストを取得する
- テキスト内容を書き換える
- 長方形などの図形を作成する
- オブジェクトの位置やサイズを変更する
たとえば、レイヤー操作は次の順番で進められます。
- 現在のレイヤー名を取得する
- 取得した名前を画面に表示する
- レイヤー名を決まった文字へ変更する
- 複数のレイヤーへ同じ処理を行う
処理を細かく分けると、コードの役割を確認しやすくなります。
次のサンプル記事も、自作練習に活用できます。
サンプルコードを貼り付けて終わりにせず、数値や表示文章を1か所ずつ変更してみましょう。
分からない処理を小さく分けて調べる
コードが長くなると、どこを調べればよいか分からなくなることがあります。
その場合は、作りたい機能を小さな処理に分けます。
レイヤー名を変更したい場合は、次のように整理できます。
- Illustratorでレイヤーを取得する
- 現在のレイヤー名を調べる
- レイヤー名を書き換える
- 複数のレイヤーを順番に処理する
短いコードで一つずつ動作を確認すると、問題が起きた場所を絞りやすくなります。
参考書やWebサイトを補助として使う
基本文法やIllustrator固有の命令を調べるときは、参考書やWebサイトも役立ちます。
最初から参考書をすべて読む必要はありません。
作りたい処理を決め、分からない部分が出たときに必要な項目を確認する方法が続けやすいでしょう。
情報を調べるときは、次の点を確認してください。
- Illustrator向けの情報か
- JavaScriptまたはExtendScriptの情報か
- 使用しているIllustratorで動くか
- サンプルをコピーしたデータで試しているか
参考書や学習サイトについては、次の記事にまとめています。
自作を続けるうえで大切なのは、長いコードを書くことではありません。
短いサンプルを動かし、1か所変更して結果を確認する。
この流れをくり返すことで、自分の作業に合ったスクリプトへ少しずつ近づけられます。
まとめ|小さなサンプルから自作を始めよう

Illustratorスクリプトは、最初から複雑なコードを書く必要はありません。
今回紹介した基本の4手順は、次のとおりです。
- 自動化したい作業と処理手順を整理する
- 開発環境を用意し、JavaScriptの基礎を確認する
- 短いサンプルを動かし、1か所ずつ変更する
- JSX形式で保存し、コピーしたデータでテストする
最初からすべてのコードを理解しようとせず、動作を確認しながら必要な知識を増やしていきましょう。
変更した場所と実行結果を比べることで、コードの役割も理解しやすくなります。
まずは短いサンプルから始め、自分の作業に近い処理を一つずつ追加してみてください。
次に確認する記事
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自分でコードを書く方法と生成AIを使う方法では、必要な知識や進め方が異なります。
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